第1回 教育デザイン会議シンポジウム

「まち」を題材とした総合的な学習の時間のプログラム開発

 5月22日、仙台市立南小泉小学校体育館にて、第1回の「教育デザイン会議シンポジウム」が開催されました。「教育デザイン会議」とは、NPO「建築と子どもたちネットワーク仙台」と学校の教員を中心に、「デザイン」をキーワードに教育を考えています。その第1回のシンポジウムに稲垣はファシリテータとして参加しましたので、その様子をレポートします。

仙台市立南小泉小学校 http://www2.sendai-c.ed.jp/~nansho13/
シンポジウムの案内ポスター http://www2.sendai-c.ed.jp/~nansho13/top/dezain.html
 建築と子どもたちネットワーク仙台 http://www.tbgu.ac.jp/ept/ac.htm

1日の流れ

13:00-13:30

基調講演「総合的な学習とデザイン」
  建築と子どもたちネットワーク代表、共立女子大教授・稲葉武司

13:35-15:00

実践発表
  石井里枝(仙台市立南小泉小学校教諭)3年「見たこともない地図を作ろう!」
  亀崎英治(仙台市立北六番町小学校教諭)4年「梅田川プロジェクト2003」
  堤祐子(仙台市立立町小学校教諭)4年「未来の西公園をデザインしよう」

15:10-17:00 ワークショップ「まち」を題材にした総合学習の単元づくり
   

ワークショップの進め方

時間
(実際にはもっとかかっちゃいました(^^ゞ)
内容
補足
15:10-15:20
ワークショップの流れを説明(渋谷さんより)
15:20-15:35
地図を読み取り、アイデアを出し合う 校区の地図を見ながら、みんなでどんな場所があるか、どんな活動ができそうかアイデアを出し合い、模造紙にポストイットで貼っていきます。
15:35-15:40
ゴールとクライアントの設定 クライアント(子どもたちに活動を「依頼」する人・場面)とゴール(活動の目的・着地点)をどうするか話し合います。
15:40-15:50
カリキュラムの流れを整理 ポストイットを並べかえたり、色画用紙を使ってカリキュラムの流れを目に見える形にデザインしていきます。
15:50-16:10
カリキュラムの仕上げと発表準備 他のグループにもわかりやすいように仕上げたあと、発表の準備に入ります。学区の案内役の人、ファシリテータは発表役にはなれません。
16:10-16:45
ワークショップの成果発表 1グループ5分程度で発表します。
16:45-16:55
まとめ

 

グループの構成

学校
学年
テーマ
学区案内人
ファシリテータ
南小泉小 1年 生活科「宝さがしをしよう!」
石井里枝

田代久美(宮城大学)

南小泉小 4年 福祉「地域の身近な人とのかかわりを見つめよう」
山口敬司
関口美恵子(仙台市役所) 鈴木南枝(NPO建築と子どもたちネットワーク仙台)
南小泉小 5年 環境「町内会からはじまる環境学習」
菅野拓生
鈴木南枝(NPO建築と子どもたちネットワーク仙台)
稲垣忠(東北学院大学)
南小泉小 6年 歴史「国分寺跡からたどる南小泉の4次元マップをつくろう」
佐々木聡一
細田洋子(仙台都市総合研究機構)
立町小 4年 福祉「人がやさしい町 立町のストリートを黄色にしよう」」
大友重明
猪股正樹(仙台市都市整備局街並みデザイン課)
立町小 5年 環境「立町環境レスキュー隊」
堤祐子
佐藤慎也(東北文化学園大学)
北六番丁小 4年 環境「梅田川サミットを開こう」
亀崎英治
中村捷子((株)飛鳥建築設計事務所)

 ※1グループ7〜8名で取り組みました。対象にする学校、学年を担任されている人が「学区案内人」として情報提供をします。「ファシリテータ」は、参加者の皆さんの意見をひきだしていく進行役です。

グループごとの作品(模造紙のみ、クリックすると拡大されます。まとめコメントは、東北学院大学教養学部稲垣ゼミの学生が作成しました)

南小泉小1年生活科 「宝さがしをしよう!」
 学区内に宝くじの良く当たるポイントがある (!)ことにヒントを得て、「宝探し」を年間のテーマに。 1年生が楽しく学習し、学校と自宅以外の学区内を知り、南小泉の「宝」を探していきます。 クライアントは山賊の格好をした校長先生とのこと。 ⇒宝を探して、見つけて、自分で作って、伝える。50年後、100年後を考える。南小泉の「人の宝」「物としての宝」「自然の宝」を見つけることがゴールです。 他にも、校庭の中に「自分の木」を決めて、その木の春夏秋冬を通して宝探しをする!という案もありました。
(感想) 「宝探し」というテーマは子どもたちが興味を持ちやすい、いい案だと思います。学区内の宝を探すことで、自分たちの地域を知るいい機会になるのでは。「宝」というのは、お金や宝石だけでなく、「人の宝」「物としての宝」「自然の宝」を探すというのが自分の地域にはこんなにすばらしいものがあるんだと、地域を好きになる子どもが増えるといいですね。(渡部)

南小泉小4年総合的な学習 「福祉:地域の身近な人とのかかわりを見つめよう」

見慣れた地域でいろいろな人がいることを知り、その中で人との関わりあいを広げ、知り合いや友達を増やしていこうと考えていた。
普段目にしているものでも、意識することで新たに気づくことがある。それを用いて地域とのつながりを広げていくという発想はおもしろいと思った。年配者との交流も増えるのでいい勉強になると思った。 (松本)

 

南小泉小学校5年総合的な学習 「環境:町内会からはじまる環境学習」

 『町内会』をキーワードとして、地球規模の環境についてではなく学区内的環境問題について考えています。この地域で行われている米作りから今と昔を比較して、昔あったけど今ないもの、昔から続いているものを考え、残していきたい、再現したいことなど話し合っていきます。また、夏祭りのごみ問題からボランティア活動について考えたり、身近なことから環境問題を見つめていきます。それらのことから最終的には町内会の人に来てもらって未来の町の模型や創作劇を作っていくことがゴールです。 町内会とは「学校便り」を通して定期的にかかわりをもって、学区内的環境問題について互いに密接な関係を持っていっしょに考えていきたいです。
 (感想) 今までにない総合学習での町内会との密接なかかわり!!ということで、そのなかで学校便りが重要な役割を果たしてくるようです。そうなると学校便りを作る先生たちも大変だろうなと思いましたが、地域との密接な関わりという点はとても魅力的だと感じました。(村上)


南小泉小学校6年総合 「歴史:国分寺跡からたどる南小泉の4次元マップをつくろう」

南小泉の校区には国分寺跡があります。そこで、「歴史に根ざした筋の通った街づくりの提案」「時系列をポイントにした歴史授業」を考えました。国分寺(跡)が過去から現代まで地域でどんな役割をはたしてきたのか、社会科の歴史の学習とつなげて取り組んでいきます。フィールドワーク(聞き取り調査・デジカメ撮影)を通して歴史を学ぶことから、歴史を知る→南小泉に愛着が沸く→南小泉の未来を夢見ることがねらいです。 まとめとして、過去から未来の町を一望できる「4次元マップ」をつくるなんてアイデアもでました。

(感想)歴史に根ざした街づくりの提案は歴史の勉強にもなるし街づくりの基礎にもなるし一石二鳥ですばらしい。フィールドワークを通して直に歴史を体験することや模型を作ったりすることで楽しく興味深く勉強できると思いました。 (早坂)

 

立町小学校4年総合的な学習 「福祉:人がやさしい町 立町のストリートを黄色にしよう」

 職人さんにインタビューをして、昔立町はどんな街だったのかを知った上で、職人さんのネットワークを作り、インタビューを受けた職人さんのお店の店頭などに黄色いハンカチを置いてもらいます。最終的にはストリート全体が黄色いハンカチになることを考えていました。さらに子どもたちがインタビューした職人さんにところへ弟子入りし、お豆腐屋やおそば屋などのオープンカフェを作り、最終的なゴールとしては、街の人と仲良くするにはどうしたらよいか?と考え、自分たちが住んでいる街をもっとよく知り、子どもたち自身が立町はこんな街です!と紹介できる力を持って、積極的に参加できるイベント(お祭りなど)をやってみたいという考えでした。
(感想) 黄色いハンカチでストリート(商店街?)をいっぱいにするとうアイディアはこのカリキュラムのウリだと思いました。「幸せの黄色いハンカチ」と名づけられていますが、街全体をひとつとし、自分たちの地域を意識する、という意味でもとても効果的だと思います。また、オープンカフェなどを開いたりなどして、イベントを作っていくという発想もとてもユニークで面白そうです。 このカリキュラムは子供たちが昔から居る職人さんと接してそこから街づくりに参加していく形というのはとても面白そうだと思いました。街全体を黄色いハンカチでいっぱいにするとう発想も地域がひとつになるという意味でとっても魅力的だと思いました。(井上)

 

立町小5年総合的な学習 「環境:立町環境レスキュー隊」

 立町の地域性の環境資源を、プラスとマイナスの要素に分けて考えてみると、西公園の花見、七夕の花火などのプラスの環境資源がある一方で、繁華街をかかえているため治安が悪い、騒音などのマイナスの環境資源があります。マイナスはより0に近づけていく活動に、プラスはマイナスにならないようにするための活動を考えました。そこから「多自然、都市型」環境学習のモデルになるようにしていくことを目的にしています。「立町環境レスキュー隊」として子供たち(全72名)が自ら取り組み、それによって子供たちに共通認識をもたせていきたいと考えています。
(感想)地域にある多くの行事や問題点を見やすく、分かりやすくまとめられていました。(門傳)

 

北六番丁小4年総合的な学習 「環境:梅田川サミットを開こう」

 校区を流れる梅田川の調査を通して他の小学校との交流や、高齢者との交流をはかります。これらの活動のまとめとして、交流校で集まって発表する「梅田川サミット」を開いて、発想をさらに広げたり、表現力をつけることをねらいとしています。 自分たちの町にある川の清掃活動を通して、ボランティアをされている様々な人との交流も考えています。
(感想)川を浄化する「エコフィッシュ」の発想がすごいと思った。まったく無駄のない、循環型の装置が、小学生でも簡単に作れると聞いて興味をもちました。エコフィッシュをもっと詳しく知りたいです。地域の清掃活動による、高齢者や他の小学生との交流は、子ども達に大きな影響を与えると思いました。(斉藤なつ子)