学校の情報化

学校の情報化?・グループウェア・論文

このコンテンツは2000年時点のものです。
卒論・修論の中身をまとめたものですが、そのまま公開しておきます。

■学校の情報化?

2001年、全国すべての学校がインターネットに接続されます。2005年には、すべての「教室」から、ブロードバンドのネットワーク環境が利用できるようになるという目標も設定されています(教育の情報化プロジェクト)。

「デジタル・ディバイド」なんて言葉もよく聞きます。情報機器を使いこなす人と、使えない人との間の格差。学校の中に、デジタル・ディバイドはあるのでしょうか?子どもたちは?そして、先生は?先生が使えない人がほんとに多い。こんな数字もでています。

でも、ちょっと待って。それは「修行」が足りないから?もっともっと「必死」になって、パソコンをできるようにならなきゃいけないの?企業ではどうしていますか?入社したとたんに研修研修、ベテラン社員も研修。それでもダメなら自分でお金をはらって教室に通っています。

じゃぁ学校も研修をどんどんすればいいのでしょうか。もちろん、それも必要です。

でも、研修にいった先生は、すぐにその日から、学校の中でパソコンを使っていくことはできますか?いつ使いますか?どこで使いますか?何に使いますか?そもそも、先生の身の回りにパソコンはありますか?最近の職員室では、先生方は「自前で購入した」パソコンを開いて仕事をする姿もよく見られるようになってきました。先生方も「パソコンぐらいできないと・・・」という意識が高まってきています。

さて、ここでもう一度、企業のオフィスと比べてみましょう。会社から支給されたパソコンで毎日のように書類を作成し、印刷し、メールを出し、スケジュールを管理しています。よくある風景です。学校では、自分で購入したパソコンで、プリンタも時には自前、フロッピー片手にウロウロ、ワープロの互換性にオタオタ・・・。教育の情報化、学校の情報化なんていっても、肝心の先生の環境が遅れていては話になりません。

ネットデイを実施した学校などでは、職員室にもLANがひかれます。職員室LANがあれば、プリンタを共有したり、ファイルを共有したり、メールを読んだり、Webで教材を探したり・・・。先生の毎日に、着実に情報化の波がやってくるわけです。学校を情報化するには、教室だけでなく、職員室も大事な要素。先生は毎日の仕事に使ってるからこそ、授業でも自信を持って使えるというワケです。

■学校向けグループウェア?

グループウェア は、グループで使うソフトウェア。企業で導入されているLotus社のNotesなんて有名ですね。文書の共有をするにも、スケジュールを共有するにも、「共有する」というのは、けっこう大変です。誰が作成したか、いつ書き換えたのか、誰なら見てもいいのか、どう整理するのか・・・。グループウェアは、個人のためのパーソナルコンピュータを、グループで使うための橋渡しをしてくれるんです。

となると、学校でもグループウェアを使ってみたくなるというのが人情。学校には何十人かの先生と、何百人かの生徒がいます。生徒は社員かお客さんか?なんて言われても困るんですが、規模でいったら立派なカイシャかもしれません。

でも、企業と学校はちがいます。先生たちの仕事の仕方もちがえば、生徒もいっぱいいる。学校に適したグループウェアというのがあっていいのではないかと思いますね。実際、けっこういろいろあるもんなんです。 学校向けグループウェア一覧を見て下さい。教育関係、情報関係のたくさんの企業から「学校向け」といわれるグループウェアがでてきています。 他にも、学校用ブラウザ、リモートメンテナンスツール、Webメール、フィルタリング等のサーバツールなどがでています。

さて、稲垣は、学校向けのグループウェアにはいくつかの種類があると考えています。(下図)

全部、「〜支援」ですね。つまり、支援する場面によって、グループウェアの目的も、デザインも変わってくると考えています。学習支援は授業で使うし、校務支援は職員室。ここまではわかりやすいですが、さて「環境支援」ってなんでしょう?こんな図で考えてみてください。学校は、授業だけではないですし、校務だけでもない、日常が繰り広げられるひとつの「場」です。先生にとっては、校務の時はコレ、授業の時はコレなんて分けないで「自腹を切ったパソコン」で仕事をしています。校務にも、授業に関係するものがたくさんあります。と、いうことは、学習支援,校務支援をバッサリ分けないで、間をつなぐ「なにか」があってもいいのではないか。その「なにか」を「環境支援」と呼んでいます。ちなみに、残った運用支援は、管理者になった先生が使います。

■info-circleって何?

 最近、学校向けグループウェア市場が盛り上がってきています。校内LANの整備についても本格的に進められつつあるようです。でも、今現在用いられているグループウェアでほんとにいいの?もっと学校の中で「あたりまえにネットワークを活用できる環境」を構築するには、別のアプローチが必要じゃないか?そんなところから環境支援型のグループウェア「info-circle」のイメージが生まれました。学校にある情報を誰と共有するか?どう流通させるか?を決められるのは、その情報を「作った人」が第一。そこでキーになったのが「情報コントロール権」。つまり、「自分に関する情報を、いつ、どのように、どの程度使えるかを自ら決定できること」を支援するようなしかけを用意することが、環境支援のベースになるべきだと考えました。

 学校の中には、児童生徒の作品から成績、校務までさまざまな情報があります。どの情報を誰と共有するのかは、学校によって、その時その時の教師が判断をせまられます。児童生徒の場合でも、学習活動に応じて、その範囲は変化することになります(教師の判断が介入する場合もあったりなかったり)。そこで、教師や生徒の「情報コントロール権」を学校の内外にわたって保障できる環境を「info-circle」としてデザインしました。下図はそのインターフェースのイメージと、情報の流れのイメージ。

(クリックして拡大)

■で、どーしてるの?

現在、某企業の学校向けグループウェア開発に助言する立場で協力しています。info-circle的発想がどの程度反映されるかわかりませんが、2001年初頭にはこうした発想に立った新しいグループウェアがお目見えする予定で楽しみです。

■論文

 修士論文:学校の情報環境を再構築するためのモデル・デザイン
        Model Design for Restructuring School Infirmation System

概要(テキスト)本文(PDF:970KB)

 卒業論文:ネットワーク構築に関する実証的研究        

概要(PDF)本文(PDF:1.35MB)

 

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