社会科の歴史学習での「つくつた」教材活用授業を見てきました!


 南島原市立長野小学校は長崎県の雲仙のふもとにあります。小規模校なので6年生は9名(授業者は田中健太郎先生)。ipadを1人1台使える環境にしての授業でした。6年生の社会科では学んだことを新聞形式でまとめられる先生も多いかと思います。田中先生のクラスでは今年4回目の新聞づくりにいよいよ、ipad+つくつた教材を投入しました!

 
  

授業のようす

 授業は2時間構成。前時にこれまで自分で作成した新聞を振り返り、つくつた教材の使い方を兼ねて、ipadを見ながら改善点を探った後、「取材ノート」ワークシートに、教科書、資料集、ipadで調べたことをメモしました。本時は2時間目。杉田玄白、本居宣長、伊能忠敬の3人から1人を選び、調べたこと、学んだことを新聞にまとめます。伝える相手は5年生とのこと。5年生に3人の魅力が伝わるような新聞づくりに挑戦しました。

 授業の導入では授業のめあてを確認したあと、つくつた名人の5か条の3「ためすべし」を紹介し、見出し、記事のわりつけ、図や写真の位置など、いろいろ試しながらつくってみてほしいことを伝えます。歴史新聞として「おどろいたこと、歴史を変えた出来事」「難しい言葉や表現を使わない」「自分がしっかり理解する」「自分の考えを入れる」「時代背景を入れる」といった留意点もあわせて確認しました。

 新聞づくりはデジタルではなくアナログで。子どもたちは取材メモをもとに、さっそく新聞形式の枠が書かれたA4用紙に記事を作成していきます。ipadで調べたことを確認する児童や、つくつた教材で見出しの書き方をチェックする児童もいましたが、ほとんど黙々と書く時間。田中先生は言葉の使い方や文章表現についてじっくり個別指導にまわります。めあてと留意点がはっきりしているからこそ、サポートしたい子どもに寄り添える、そんなしかけがあります。


 

 書く時間を20分ほどとったあと、同じ人物に新聞づくりをしている児童どうしでの相互評価の時間に入ります。付せんを使ってお互いの新聞のいいところやアドバイスをしていきます。ここで活躍したのがipadのつくつた教材。どんな視点で見たらよいのか、具体的にほめたりアドバイスするポイントはどんなところか、子どもたちはipadで確認しながら付せんにコメントを書いていきます。田中先生は子どもたちの様子を見ながら「見出しのところを見てごらん」といった形で、どういったポイントで見るべきかアドバイスを与えていきます。教材がなければ、「たとえば・・・」「◎◎のようにしたら」と具体的にアドバイスをその都度する必要がありますが、教材の説明動画とサンプルを見ながら、子どもたちは自分でアドバイスを考えていくことができました。 

 授業のまとめでは、子どもたちが書いた付せんをプロジェクタで投影して、どんなアドバイスがよかったのか共有しました。完成した新聞を5年生の子どもたちがどんな顔で読んでくれるか、楽しみですね。

  


授業者からのコメント

 歴史の授業での新聞づくりは4月から3回、取り組みました。4回目になると子どもたちも慣れてきて、どう書けばいいのかはつかんでいるのですが、自分の書き方に満足してしまいがちです。つくつた教材を見せることで、目標が高くなっていく姿を見ることができました。ipadは調べ学習にも使いました。教科書、資料集はみんな同じ情報ですが、ネットをあわせて友だちの知らない発見を新聞にしようと意欲的に取り組んでいました。本時では特に相互評価の場面でつくつた教材を使いましたが、指導の仕方が変わりました。グループをまわっていて、気付かせたいことがあるときに、これまでなら例を挙げたり、説明が必要でしたが、つくつた教材に説明をまかせることで、他のグループの支援にまわれます。先生に言われた通り直すのではなく、教材を見ながらどう改善するか自分で考えて引き出していたようです。(田中健太郎・南島原市立長野小学校)。 


研究者からのコメント

 田中先生へのインタビューで印象的だったのが、「たくさん取材メモを書いている子ほど、調べることに時間を使っていない」という言葉でした。メモ=写すことになっていると、調べたことをすべて書き写してしまい、記事としての分け方や軽重を考えるよりも、写したメモをさらに新聞に写す、という作業になりがちなのだそうです。つくつた教材の「取材」のところで取り上げていますが、子どもたちの姿から教材の改善点も見いだすことができました。また、1人1台ipadがあることで、つくつた教材とじっくり向き合って考えてから、グループでの話し合いに活かせていたのも、この環境ならではの取り組みでした(稲垣忠・東北学院大学教養学部)。